主な内容
2章 診断と治療
3章 腰痛・頚部痛の原因
4章 専門医へのコンサルタントおよび各専門分野の主な治療法
5章 腰部・頚部のメンテナンス
6章 痛みを予防する方法
7章 痛みとうまくつき合う方法
8章 リハビリテーション・エクササイズ
用語集 他
読者の声
第一にキレイです。カラフルで読みやすく勉強になりました。
監訳者インタビュー

2013年の年末に『英国医師会 腰痛・頚部痛ガイド』が刊行されました。 本書は、英国医師会の全面協力によって腰痛・頚部痛の世界標準的知識を一冊にまとめた「THE BMA GUIDE TO BACK CARE」の翻訳版です。
監訳者は関東労災病院勤労者筋・骨格系疾患研究センター長の松平浩先生と、東京大学医学部附属病院整形外科・脊椎外科准教授の竹下克志先生。各章の翻訳には、脊椎外科領域などのエキスパートとして活躍する総勢20名の医師、研究者、理学療法士、鍼灸マッサージ師が携わっています。
ここでは、監訳者のお一人である松平先生に、本書の特徴や読みどころについて教えていただきます。
――松平先生は、職場環境や生活習慣、心理・社会的要因などが腰痛に与える影響の分析をはじめ、腰痛の予防対策につながる数多くの調査を行っていらっしゃいますね。
現在所属する労働者健康福祉機構の事業として、腰痛の危険因子を含む実態把握や予防法の研究などを進めてきました。腰痛については、世界的にみてもたくさんの調査・研究が行われていますが、近年、WHO(世界保健機関)を含む7つの世界主要機関による最新の調査報告(世界の疾病負担研究:Global Burden of Disease Study)によると、生活に支障を与える疾患の第1位は腰痛であることが、「Lancet」という世界で最も権威のある英国の医学雑誌に掲載されました。
また日本では、厚生労働省が公表する「国民生活基礎調査」「業務上疾病発生状況等調査」において、国民の愁訴としても、仕事(作業)が原因で4日以上の休業を要した疾病としても、腰痛は長年に渡りトップにランクされています。
これらのことから、腰痛が日本においても世界においても、最もポピュラーな訴えで、社会的損失の大きい問題であるといえます。しかし、視点をかえれば、世の中の腰痛対策が奏効しきれていないことを露呈した報告や統計データであるとも解釈できます。
――これまでたくさんの研究が行われているのにもかかわらず、腰痛に悩んでいる人は依然として多いということでしょうか。
そうですね。その理由の一つには、「木を見て森を見ず」的な医療者の考えや治療行為が根底にあると考えています。具体的には、「脊椎の障害、あるいはより細かい解剖学的部位や組織損傷への執着」と「自分が得意とする、あるいは知識が及ぶ範囲の治療手段への執着」です。腰痛の捉え方やアプローチ法は、世界的な流れと同様、日本においても、心理・社会的要因の重要性も勘案した方向へ舵が切られています。歴史的な転換期に入ったことを、医療者は強く認識する必要性があるでしょう。
――“世界的な流れ”というお話がありましたが、本書は世界の医療従事者から支持を得ている「THE BMA GUIDE TO BACK CARE」の翻訳版です。その特徴はどんなところでしょうか。
まず何よりも、信頼の厚い英国医師会(British Medical Association:BMA)が企画・構成していることが最大の特徴です。国際的にみてもとても権威のある医師会ですし、世界の標準的な知識や情報がまとめられていると言えます。
本書の内容としては、腰背部痛をはじめ、腰痛と同様に診断や治療が容易でない頚部痛について詳しく解説しています。解剖から原因となりうる疾患や病態、診断学、様々な専門領域の治療法、今後の疼痛治療の基軸と言っても過言ではない運動療法の詳細、そして日常生活や職場での予防法やリラクゼーション法を含む痛みと上手につき合うストラテジーまで、丁寧かつフェアに記載されています。
理解を助ける豊富なカラーイラストも印象的です。8章では、代表的なエクササイズであるキャット&キャメル、カール・アップ、スクワット、マッケンジー伸展を含む全109のリハビリテーション・エクササイズのメニューを50ページ以上に渡って掲載していますが、動きの段階ごとにカラーイラストで紹介していますので、とてもわかりやすいと思います。
また、先程申し上げたように腰痛の捉え方やアプローチ法では、心理・社会的要因を十分に考慮することが世界的な潮流となってきています。本書でも、心理的要因の詳細を具体的な例を挙げて紹介し、かつ、痛みの捉え方のアドバイスやリラクゼーションによる痛みの緩和法などについて詳しく記述されています。さらには、職場や日常の生活で留意すべき姿勢のポイントについても詳細に解説されており、患者へ指導する際にも大変役立つ内容が満載です。
本書は腰痛・頚部痛に関する広域な範囲の知識を網羅しています。この本のことをすべてやるべきということではなく、大事なことは、医療者はこういったいろいろな知識を知っておく必要があるということです。この分野の「森を知る」、つまり包括的な知識を整理するのに最適な本と言えるでしょう。
――本書をどんな方に読んでもらいたいですか?
私自身、本書を監訳するにあたって、大変勉強になり、新たな発見が多数ありました。様々な立場で腰痛・頚部痛の臨床に携わっているセラピストの皆さんとコメディカルの方々、さらにはプライマリケア医や本分野における専門医の先生方にも役立つ1冊であると確信しています。
本書が腰痛や頚部痛に悩む患者さんの着実な減少という我々医療者の悲願と言ってもよい社会的公益性の一助になれば、とても嬉しいですね。
●●松平 浩(まつだいら こう)
1992年、順天堂大学医学部を卒業後、東京大学医学部整形外科に入局。
1998年、東京大学医学部整形外科助手(腰椎・腰痛グループ・チーフ)。
2008年、英国サウサンプトン大学(病院)疫学リソースセンター(シニアリサーチフェロー)。
2009年、関東労災病院勤労者筋・骨格系疾患研究センター長、(独)労働者健康福祉機構本部研究ディレクター。
医学博士。日本整形外科学会専門医・リウマチ医・脊椎脊髄病医、日本脊椎脊髄病学会認定指導医、日本体育協会スポーツ医、日本腰痛学会評議員、日本職業災害医学会評議員。『Spine』誌等reviewer。著書に『新しい腰痛対策Q&A21』(公益財団法人産業医学振興財団)、『「腰痛持ち」をやめる本』(マキノ出版)、『ホントの腰痛対策を知ってみませんか』(公益財団法人労災保険情報センター)がある。
2012年、「運動器の10年」世界運動・普及啓発推進事業奨励賞受賞。
※監訳者の肩書は出版当時のものです
ページサンプル
![]() |
![]() |
![]() |
商品説明
腰痛と頚部痛を系統的に学びたい人に最適な、読みやすくてわかりやすい、信頼できる1冊!世界中の医療者から支持を得ている英国医師会による腰痛・頚部痛ガイド(原題:THE BMA GUIDE TO BACK CARE)。その翻訳版の登場です! 本書は、腰痛と頚部痛に対する正しい予防法・診断法・治療法について解説しています。腰部・頚部の解剖、痛みが起きる原因、西洋医学的な治療や補完代替医療など、腰痛と頚部痛に関する世界標準的な知識を明快にまとめており、患者を健康な状態に導くためのさまざまなアプローチがわかります。
ISBN:978-4-7529-3102-7
著:松平浩(関東労災病院 勤労者筋・骨格系疾患研究センター長)
竹下克志(東京大学医学部附属病院 整形外科・脊椎外科准教授)
仕様:B5判 228頁
発行年月:2013/12/25
※監訳者の肩書は出版当時のものです