HOME 書籍・DVD 絵本 難経レッスン 〜パンダと巡る東洋医学の世界〜
あらすじ
読者の声
著者インタビュー
――「難経」(※)に関する本は、これまで数多く出ていますが、本書の特徴を教えて下さい。
大上 古典医学に興味を持つ学生にも読んでもらえるように、平易な言葉と、パッとみて直感的にわかる絵になるように心がけました。それぞれの難で一つのテーマに絞りこみ、一通り読むと脈診・診断・治療について、「こういう仕組みで東洋医学は成り立っているんだ」とわかるようにしました。
内容的には、すべての中国古典医学の原点であることを意識して書きました。『難経』には、脈診の基礎から始まり、身体の仕組み、病気の仕組み、そしてその治療法と、診断から治療について幅広く書かれていますから、初めて東洋医学に触れる人にも、その考え方がわかるようにという思いを込めました。
※『難経』…現存する最古の医書。81章から成り立ち、すべて問答形式になっている。中国太古(紀元前五世紀頃)の伝説の名医扁鵲(へんじゃく)によって書かれたと言われているが、正確な著者や成書年代は不明。後漢時代に編纂された
――「直感的にパッとわかる絵」を描いていただいたフランさんは普段、どのような活動をされていて、またこの仕事が来たときにどう思いましたか。
フラン 僕の仕事はイラストとアニメーションです。イラストでは、絵本の挿絵やレアル・マドリッドの公式絵本に携わりました。アニメーションでは、テレビやCMのアニメのキャラクター作成、監督、美術監督等をしています。
この仕事の話があったとき、これは東洋医学の知識を深める絶好の機会だと感じました。そして「日本で出版する」という僕の夢が実現するんだ、とうれしくなりました。
――本書を作るにあたって苦労したところを教えて下さい。
大上 作業としては、まず僕が「本文」「解説」「ラフ」を書きます。それをメールで送ってフランにイラスト化してもらいました。当初はフランから本文に関する質問も多くありましたが、内容を踏まえたうえだと、作業がなかなか進まない状態になったので、途中からラフの内容に絞って、書いてもらうようにしました。
当然、フランはスペイン語、僕は日本語なので、妹(編集部注:フラン・ブラボー氏は大上氏の義弟にあたる)に翻訳・通訳・説明をしてもらいました。妹は東洋医学の素人なので、まずその概念を妹に説明するのが、苦労しましたね。理解して、それをスペイン語に訳して説明しなければいけない妹も大変だったと思います。
日本とスペインは時差が8時間ありますから、お互いの早朝、深夜のスカイプによる打ち合わせも結構大変でしたね。ましてや、ブラボー家にはお母さんについて離れない1歳の姪っ子までいましたからね。
――フランさんは何に一番苦労しましたか?
フラン 今まで愛嬌のある肝臓ってどんなのか考えたことってあります? ってのが、第一関門、とでもいいましょうか。あと、なんと言っても抽象的な表現の「気」や「エネルギー」等のキャラクター化に苦戦しましたね。
あと、勝行君も言っているように、娘がパンダ見たさに何度も部屋に入ってくるのも困りました(笑)
――シナリオにする際に苦心したところは、どこですか。
大上 やっぱり後半の治療のところですね。初心者にもわかるようになるべく簡単に書こうと思っても、表現の仕方が難しかったです。特に69難、75難の選穴にかかわる個所は、経絡治療家にとってキモで絶対に注目されるところですから、専門家が読んでも「なるほど」という物を書こうと心がけました。
――「こうきたか!」と大上先生が驚かされたような、フランさんの発想が生かされたところはありましたか。
大上 フランは凄く勘のいい人で、ぼくの拙いラフと説明で、ほぼ期待通りの絵を描いてくれました。手直しも、数回でOKとなる場合が多かったので助かりました。
3、4、6難などの、脈を擬態化するという難しい意図にも、思っていた以上のイラストを返してくれて、高いハードルをすんなり越えてくれました。あれで「いける!」という手応えを感じました。
フラン 勝行君のラフはとても役立ちました。コンセプトがはっきりしていましたからね。そして、その解釈の幅にすごく自由を与えてくれました。
僕として、内臓くん達がちょっと一杯飲んでいるイラストや、カード遊びをしているみたいに、実際目には見えないものがうようよ存在しているものを表現するほうが、よっぽど困難でした(笑)
――大上先生は学生の方々と接する機会も多いと思うのですが、学生にとって「難経」は難しいものなのでしょうか。どのへんでつまずいてしまうのかを教えて下さい。
大上 『難経』に限らず、古典医学を学ぶ時の一番の障壁は漢文でしょうね。これをクリアするコツは、とにかく先に進むこと、何度も繰り返すことです。一つ一つの漢字の意味につまっていたら、必ず嫌になって、どこかで挫折します。わからないところはとりあえず置いておいて、わかる所だけ読んでいくのです。そのうち全体像がつかめるようになってきて、語句にもなれてくると自然に理解できるようになります。 >この『難経レッスン』で、これから古典医学をやろうという学生さんはもちろん、かつて「陰陽虚実がわからん、脈診がわからん」と伝統医学の勉強を投げ出したものの「何とかならんか」と未練を持っている臨床家の方たちにも読んでもらい、この世界のおもしろさを知っていただきたいと思います。
――最後に、読者へのメッセージをお願いいたします。
大上 偉そうなことを言っていますが、僕も『難経』のすべてが頭に入っていて、理解できているわけではありません。だから何度も書いたり読んだりしています。そのたびに新しい発見があり、自分の成長が確かめられるようで、うれしくなります。古典医学は、一生かかってマスターしていく、いわばライフワークです。
『難経』に書いてあることをイメージでき、全体像をつかむには、この『難経レッスン』が最適です。この本でまず興味を持っていただいて、原文を読んでいただくと、理解も深まると思います。 フラン おそらくこの本は、たくさんの人にとって一見難解だけど神秘的なテーマに飛び込むことができるきっかけになると思います。おもしろおかしく、自分の体からのメッセージを聞き、世界を理解する招待状です。
(了)
文:おおうえかつゆき Site : https://o-ue.com
Site: https://www.franbravo.com 通訳・制作協力:おおうえとしえ |
商品説明
81難が見開きで楽しくわかる!脈をみたくなる、鍼が打ちたくなる!
現存する最古の医書「難経」。「素問」「霊枢」と並ぶ東洋医学の三大古典であり、鍼灸学の基本となっている「難経」は、鍼灸師や鍼灸を志す者なら誰しもが通る道である。そして、また難解な古典であるがゆえに、挫折した経験を持つ人や、とりあえず通読したけど記憶に薄いなんて人も少なくないだろう。そんな「難経」を絵本で解説するという画期的な試みを行ったのが、本書である。
1難ずつを見開きで、2人の会話とイメージしやすいイラストで解説。初学者にはもちろん「難経」をもう一度学びたい臨床家にとっても、マストアイテムとなる1冊がここに誕生!
■ISBN:978-4-7529-6060-7
■文:おおうえかつゆき
■絵:フラン・ブラボー
■仕様:A5判 163頁 オールカラー
■発行年月:2010/02/12