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温灸読本
ポイント20倍
商品コード:
1139-5

温灸読本

3,960円(税込)
ポイント: 720 Pt

商品説明

宮川浩也氏が、長年の臨床経験から得た治療のコツを盛り込みながらイラストと写真を使って楽しく解説します!

学校でいくら刺鍼法や施灸の方法を学んでも、その活用方法が分からなければ臨床の現場には立てません。
ツボとは一体、何なのか。
鍼と灸は、何が違うのか。
透熱灸と温灸は、どこが違うのか。
お灸の壮数は、何を目安にすればよいのか。
などの鍼灸の基本ってきちんと理解していますか?
今まで曖昧だったそれらの疑問に応えてくれるのが、本書です。
基礎になる考え方と温灸(知熱灸・八分灸・灸頭鍼)の実際の運用までをイラストと写真、そして宮川氏の長年の臨床のコツを盛り込みながら解説しています。

ISBN:978-4-7529-1139-5
著:宮川浩也
仕様:B5判 105頁
発行年月:2014/3/15

主な内容

第1章 経脈とは
十二経脈説の基本
・十二経脈・経絡・経脈の循行・営血と衛気・経脈の本来の姿・経脈病・経穴を使った治療、経脈を疏通する治療など

第2章 ツボのとらえ方
ツボの3要素、ツボの深さ、ツボの状態、ツボの広さ、経脈の素体の慢性化、診察

第3章 温灸の施術方法  
モグサについて
・モグサの鑑別・ある程度の火力・まとまりやすいモグサ・均一に燃える・コスト・煙・線香
温灸の実際
・知熱灸・灸頭鍼・八分灸

推薦

「こんな本が読みたかったんや(京都弁で失礼)!」読み終えた最初の感想。
俗な表現で言うと、痒いところに手が届く痛快さ。
知りたいと思っていたことが其処かしこにちりばめられた明晰さ。
まさにこれぞ、待望の一冊。
きちんとした古典解釈に裏付けられた一言一句に、目からウロコが何枚落ちたことでしょう
(著者は、気は温かみである、によって3枚ほど落ちたと書いておられますが、私の場合はさらに何倍も落ちました)。
『温灸読本』の“温灸”は鍵です。古典という大きな宝箱を開けるためのたいせつな“鍵”。
そこに宝物がいっぱい詰まっていることが分かっているのに、開けられない人はきっと大勢いらっしゃるでしょう。
そう、鍵が見つからないのですから仕様がありません。
温灸を“鍵”とした古典の世界への見事な誘い。開けたその箱の中には、さらに宝箱が蔵されています。
それを開ける“鍵”もきっとこの『温灸読本』の中に埋めこまれています。
温灸入門書、じつは宮川流古典入門書。宮川流臨床入門書。
初学者も、経験豊富な臨床家の先生も、教育現場の先生方も、きっと「こんな本が読みたかった」と
実感されるに違いありません。
ぜひお読みください。

平成26年7月5日

京都仏眼鍼灸理療専門学校
校長 小 林 靖 弘

書籍詳細

著者インタビュー

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今春、日本内経医学会会長、日本伝統鍼灸学会副会長の宮川浩也先生執筆の『温灸読本』が刊行されました。本書はツボの見つけ方を中心とした温灸の基本と実際の運用方法を、宮川先生の臨床のコツを盛り込みながら、紹介しています。ここでは宮川先生に、本書を通じて伝えたかったことについて、うかがいました。

(2014年5月にインタビュー)


――宮川浩也先生が温灸を始めた理由を教えてください。

宮川 私は自宅開業なので、煙の制限はありませんでしたし、師匠の故島田隆司先生が臨床の中で温灸を運用していましたので、自然の流れとして、自分の治療に取り入れました。島田先生から作り方、やり方を、手取り足取り教わったことはありません。まったくの見よう見まねです。
  米粒大の艾炷も、島田先生独特の撚り方があります。これまた、見よう見まねです。ですが、とても役立っています。私はこれをたくさんの人に教えましたが、後を追う人は出てきません。つまり、実際に運用するかどうかは、灸法の優劣にあるのではなく、運用する側の意識にあるようです。見よう見まねでも、熱心に追いかければ、自動的に上手になります。熱心に追いかけるコツは、おもしろがることです。これを「楽しみ、その中に在り」と言うようです。

  開業して10年くらいは、透熱灸を多用していましたが、化膿することが多くなり、クレームも出始めましたので、知熱灸・八分灸で代用できないか試行錯誤していました。その結果、透熱灸ほどの著効は期待できないものの、ツボが浅く、慢性化していないのであれば、十分に応用できると分かり、積極的に運用しています。灸頭鍼は慢性化したツボの時によく使います。

―― 本書の執筆依頼を受けてから、どのように内容を固めていったのですか?

宮川 島田先生がお亡くなりになった後、『霊枢』講座を始めました。丸13年経過したところですが、ようやっと半分を読み終えたところです。13年もかかって半分しか読めない理由は次のようなものです。
   「どうして治らない?」「気穴に当てましたか? 肓まで鍼が到達しましたか?」という問答があります。これを理解するには、気穴とは何か、肓とは何か、これらを明らかにしなければなりません。適当に流すと、せっかく『霊枢』を読んでも、空読みになってしまいます。注釈書がたくさんありますから、それを参考にすればよいのですが、納得できないので、いろいろと調べたり、考えたり、妄想したりして、答えをひねり出します。答えが出なければ、課題にし、「ああでもない、こうでもない」と考えます。結論が出るまで、半年から1年くらいはかかります。

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また、「自然とは何か?」「掘を循(なら)し、衝を決(ひら)いて、経が通じること」という問答もありました。「自然」とは何か。これは大きな問題でした。「自然」は、老荘思想のことばです。だから、きちんと理解するために、老荘思想を学ばなければなりません。老荘を学んだお蔭で、『霊枢』だけでなく、『素問』にも、老荘的な背景があることが分かりました。さらに掘り下げると、禅宗にも老荘思想が介入していることが分かり、打鍼術を開始した禅僧の夢分翁との接点が生まれました。こうなってくると、収拾がつかなくなり、どんどん拡がっていきます。
  「掘を循(なら)し、衝を決(ひら)いて、経が通じる」とは、凹(堀)を埋めてならし(循)、凸(衝)を削ってならせば、経脈は自然に快通する、という意味です。経脈説と老荘思想は切り離せないと判明すれば、『霊枢』経脈篇は一から読み直さなければなりません。せっかく読み終わったのに……。
   進んでは戻り、進んでは横道にそれ、進んでは立ち止まり、このようなことを繰り返して13年が経過してしまいました。『温灸読本』の下地は、この13年間にあります。
  また、「鶯谷書院」という研究室を企画して、唐代の医書である『千金方』『千金翼方』のデータベースを作成して3年目に入っています。両書には、灸法の記録がたくさん残っています。膨大な文書なので、なかなか研究するには至っていません。しかし、データベースによって検索が容易になり、調べ検討しやすくなりました。
  たとえば、『千金方』には「灸例」という灸法の原典に相当する一篇があります。今まで誰も読んでいないようなのですが、そこにはツボとは何か、ツボの取り方、寸法のはかり方、禁忌など、灸法の原則・約束事がきちんと書かれています。灸法の知恵の宝庫です。『温灸読本』のタネ本があるとすれば、『千金方』の「灸例」ともいえます。
  なお、『千金方』『千金翼方』のデータベースをご希望の方は、「鶯谷書院」のHPからご連絡ください。


―― この本を執筆するにあたって、一番こだわったこと、一番伝えたいことについて、教えてください。


宮川 鈴木大拙先生は『東洋的な見方』(岩波文庫)で、日本人の弱点は、「分別性を軽んじ、思慮に乏しく、少年の域から脱出していないところにある」と言われています。物事を突き詰めずに、まあいいかと曖昧に流されやすいところを言っています。「鍼はどこまで刺しますか?」「適当な深さまでです」というのはよく見られる光景です。たいていはここで止まってしまう。適当とはどういうことか、適当な深さとは何を意味するのか、問い詰めるような光景にはめったに遭遇しません。
  もともと鍼灸の分野が曖昧なところにきて、日本人の思慮を軽んずる態度と合わせて、日本の鍼灸は掴み所がありません。結局、多種多様という一言で片付けられています。長く臨床に従事していれば自然に分かることが多いので、この問題は放置されたままです。
  鍼灸を普及させるためには、曖昧さはマイナスです。なんのプラスにもなりません。もともと、鍼灸は怪しい、いぶかしいと思われているところに、発信者も曖昧なのでは、いつまで経っても普及しないと思います。
  今、お墓を建てるかどうか、戒名が必要なのかどうか、迷っています。昔からの慣習だと言われても、本当に仏教に欠かせないものなのか。仏教の本当の教えとは何か。こういうところをお坊さんが明白にしない限り、だんだん疎遠になっていくのではないでしょうか。
  鍼灸とはどのような医学なのか。なぜ必要なのか。どこに特徴があるのか。こういうことを明瞭にし、社会にきちんと主張していかないと、同じように衰退していくのではないでしょうか。『温灸読本』では、ここのところに力を注いでみました。

―― この本をどんな方におすすめしたいですか?


宮川 『論語』に「憤(ふん)せざれば啓せず、悱(ひ)せざれば発せず」という言葉があります。「啓発」という言葉の出どころとされています。「憤(ふん)」というのは、悩みもだえているさま。それを開くのが「啓」。「悱」というのは、言おうとするがどのように表現すべきか分からないさま。「発」とは、それを導くのが「発」。啓発というのは、問題点が明らかになってはいるが、最後の決着が付かないときに、ヒントを与えて、決着をいざなうことです。なるほど、上手いことをおっしゃっています。拙著がそういう人の役に立てれば、最高です。悩んで、困って、迷っている人のヒントになればと願っています。
  お灸は、だんだん廃れつつあります。お灸が悪いのではなく、お灸を理解しないわたし達が悪いのです。お灸の良い所を、活かしてあげればよいのです。「わたしはお灸をしないから関係ない」と言わないで、鍼灸に携わる皆さんで、東洋医学に従事する皆さんで、灸法を開発工夫し、おおいに発展させましょう。

―― 読者の方にメッセージをお願いします。


宮川 鍼灸医学は2000年以上の歴史があります。初期に発見・経験したことを基礎にし、長年の経験を積み重ね、時代の思想の影響を受けて、発展し、整理され、そして現在のわたし達の目の前に置かれています。『温灸読本』では基礎・基本を大切にしたかったので、初期の姿を明らかにすることに注力し、ツボを重点に置きました。鍼灸の始まりは、ツボの発見にあると思います。不健康な人にはツボがあり、健康な人にはツボがない。そこから出発しました。
  ツボはどのように見付けたのでしょうか。ツボの代表格は、いわゆるコリというもので、見つけやすいものです。鍼灸の流派では、あん摩10年といって、コリをみつける修行を課しているところもあります。ついで、圧痛点でしょうか。次に、凹みや冷えなどが見つかったのかも知れません。鍼灸治療の基礎トレーニングを原点に戻すとすれば、「ツボ探し」に尽きるでしょう。どの流派にも共通すると思います。鍼を刺すことや、モグサをひねることは、その次でよいのではないでしょうか。穴名や、経穴の効能(主治症)とか、五行配当とかは、さらにその後で学ぶべきです。
  このように、鍼灸の原点が明確になれば、教育方法が合理的になり、学ぶ者の血肉となりやすくなります。血肉が充たされれば、自動的に臨床への道は開けるのではないでしょうか。



 温灸読本

●宮川浩也(みやかわこうや)

1956年、宮城県生まれ。1978年、東京農業大学農学部卒業。1981年、東洋鍼灸専門学校卒業の後、島田隆司氏に入門。1986年、みやかわ温灸院開業。1993年から東京衛生学園専門学校臨床専攻科非常勤講師、2009年から筑波技術大学非常勤講師。日本内経医学会会長、日本伝統鍼灸学会副会長。

訳書に、『現代語訳啓廸集』(共訳、思文閣出版、1995年)、『医古文の基礎』(共訳、東洋学術出版社、2002年)がある。

共編著に、『素問・霊枢 総索引』(日本内経医学会刊、1993年)、『扁鵲倉公列伝幻雲注の翻字と研究』(北里研究所東洋医学総合研究所医史学研究部刊、1996年)、『素問攷注』(日本内経医学会・北里研究所東洋医学総合研究所医史学研究部刊、1998年)、『黄帝内経明堂』(北里研究所東洋医学総合研究所医史学研究部刊、1999年)がある。『素問・霊枢 総索引』は、1994年に第8回間中賞受賞(医道の日本社主催)。『黄帝内経明堂』は、1999年に第13回間中賞を受賞。

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